なろうで見かける違和感のある表現

コラム

 言葉は時代と共に変化していき、誤用であっても大多数の人に受け入れられればそれが正となる。あるいは伝言ゲームで最初に言いづらい言葉でスタートした時に、途中で徐々に言いやすく変化していき最後の人には言いやすい言葉で伝わる。あるいは大きな企業ではその会社でしか使用しないような言葉遣いがあったりします。言葉とはそういうものだとは思うのですが、それでもなろうで頻繁に見かけ、違和感が拭えない表現があります。そういった言葉をピックアップしてみました。

違和感100%

意識を手放す

 なろうでのみ頻繁にみかけ、どうしても違和感が拭えないのがこの「意識を手放す」という表現です。意識は意図せず不可抗力で失うものであって、自発的にコントロールして意識を無くすことは不可能です。誤用が多数に受け入れられて正となることはありますが、これに関しては不可能な事象なので難しいのではないかと思います。

違和感80%

剣を振るう

 「振るう」という表現は日常では「権力を振るう」「力を振るう」「暴力を振るう」といったどちらかといえば抽象的な事柄に関して使用されているのをよくみかけます。一方何か物を振る時は「棒を振る」とか「棒を振り回す」と言い、「棒を振るう」とはあまり言いません。「危ないから棒を振るうなよ」と注意したりしませんよね。大きな動作で物を振る場合に振るうというのは正しい表現ではありますが、あまりみかけることありません。なろうで違和感を感じるのはあまりに頻繁に「剣を振るう」と表現されるからです。素振り程度なら「振る」で、ここぞという時に「振るう」でいいのではないでしょうか。

 ちなみに采配は「振る」が正しく、大きく振る動作ではないので「振るう」は厳密には誤用だそうです。「権力を振るう」という表現と混じったのかもしれません。あるいは采配を物ではなく抽象的なものとして捉えているのかもしれません。

過剰なルビ

 異世界小説なので「火球」に「ファイアーボール」とルビを振ったり、もう少し厨二病的にややこしい漢字の魔法にカタカナのルビを振ったりは全く違和感はありませんが、地の文にやたらとルビを多用するのは違和感があります。読みづらいですし正しい文章の表現力で勝負して欲しいなと思います。

文法を守らない

 文法を知らないのか、何らかのこだわりで守らないのかわかりませんが、句読点がなかったり、字下げがなかったり、改行の間隔がやたらと開いてたりは間違っていると思います。小説は最低限のルールがあるからこそ読者も読むことができるのであり、文法を守らないことは表現手法にはならず、いたずらに読みづらくなるだけで意味のないことと思います。

違和感50%

外来語

 これは言葉の誤用ではなく異世界小説に特有の問題ですが、異世界で「ジュースを飲んでホテルのベッドで就寝する」と表現すると読者としては急に現実に引き戻されて違和感が出てきます。作者の方も工夫されていて「果実水を飲んで宿の寝台で就寝する」というような表現をされます。日本語で書かれた異世界を舞台にした小説にさらに別の国の言葉が出てくることが根本的な問題ですが、かといって外来語を全て排除すると今度は時代小説のようになってしまいます。読者としては何だか江戸時代の侍やお姫様のような和装や、和風の城や家屋が思い浮かんでしまいます。上手くバランスを取る必要があります。また、アルファベットも問題で「プランAとプランBどちらにするか」のような表現で現実に引き戻され、「PDCAサイクルを回そう」などと出てくれば興醒めしてしまいます。

 このあたりの問題を一気に解決するのが異世界転生や異世界転移で、主人公が読者と同じ文化的背景を持っていればPDCAサイクルを回そうとミーティングを開こうと一切の違和感がなくなります。転生や転移はよく考えれた設定だなと思います。

 ちなみに「サンドイッチ」については中世ヨーロッパ風世界でも、私は違和感全くありませんでしたが、言われて気になるようになりました。気にしたら負けかもしれません。

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